現代スウェーデン語で従来,再帰代名詞であると考えられてきた sig が既に再帰としての機能を失い中相を表す形態素として機能していることを主張した.Sig は単独では典型的な再帰構文に現われなく,sig själv (self) が再帰の機能を担っている.Sig は raka sig 'shave' などの身だしなみを表す動詞などをはじめとする,Kemmer (1993) が典型的に中相範疇が表れるとしている動詞に現われる.類型論において再帰構文が「再帰→中相→受動」と変化することが解明されているが,スウェーデン語には再帰代名詞から発達した接辞 -s があり,これは主に受動の機能を持つ.Sig själv が項として,-s が接辞として機能しているのに対し,sig は項と接辞の両方の振舞いを見せ,文法化の一般的な傾向とも一致する.
再帰 | 中相 | 受動 |
sig själv(項) | sig(項/接辞) | -s(接辞) |