副助詞節は,様々な意味関係で主節と結び付き複文を構成する副詞節の一種であると考えられてきた.モンゴル語でも数多くの副助詞接尾辞が動詞語幹に付くことで副助詞節を形成するが,従来の研究では,接尾辞の意味/機能の記述と説明にのみ関心が向けられ,統語的な位置づけや特徴は見過ごされてきた.
副動詞構文における主節と副動詞節のそれぞれの主語の同一指示性,非同一指示性と各節内の再帰所有接尾辞の分布の仕方を観察すると,「副動詞節」と呼ばれてきた言語単位が,従属節よりもさらに従属の程度の高い副詞句であることがわかる.モンゴル語の副動詞構文は,複文ではなくて単文なのである.この単文性こそが,実は,副動詞節内の対格形主語の出現の根拠を示唆してくれることになる.