水のメタファー
―日本語の比喩研究における方法論に関する一考察―

鍋島 弘治朗(中部大非常勤)

Lakoff and Johnson (1980) 以来,比喩研究は盛んになっており,主要な研究としては,Lakoff and Turner (1989),Lakoff (1993), Grady et al. (1996) などがあり,また,日本語における比喩研究としては,佐藤 (1978, 1992),山梨 (1988),瀬戸 (1986, 1995) などがある.しかし,日本語における先行研究の対象範囲はまだ限られており,大元の英語に閲する研究の方法論にも不十分な点がある.そこで,本発表では,日本語における比喩の記述の拡大に寄与するとともに,比喩研究の方法論に関する提案を行った.結論としては,言葉,金,感情といった領域が,水の比喩になっているのみならず,容器 (container),上下,善悪,他動性などの要素が複合的に組み合わされて生産性の「まだら現象」を引き起こしていることを主張した.