ドム語(パプア・ニューギェア)のトーン
千田 俊太郎(日本學術振興會/京都大大學院)
本發表は,ドム語における辨別的なピッチの分析を目的とする.音馨データの觀察から次のことが結論づけられる.ドム語のトーンは基本的に語をその領域とすること.トーンは三つの基本的な型,すなはち高,下降,上昇か區例され,また接語は特定の環境で固有のトーンを失ひ接語特有の異なる型をもつこと.それぞれのモーラヘの調値の付與は語末の e 削除前に語末から行はれること.
さらに考察を深めた結果,つぎのことが判った.借用語には,基本的に下降トーンが與へられること.動詞は,活用形のトーンの在り方により四別されること.接尾辭には,トーンに關はらない接尾辭,トーンを有ち語幹のトーンを無效にする接尾辭,語幹のトーンを變へる接尾辭があること.トーン領域を複數もつ形式があるが,個々のトーン領域はトーンのほかにも語的な音韻特徴をもつことが多いこと.このことは前に示した基本的な解釋を支持してゐる.