幼児のアクセント規則形成の過程

白勢 彩子(名古屋大学/日本学術振興会特別研究員)
窪薗 晴夫(神戸大)
桐谷 滋(神戸海星女子学院大)

従来,言語に共通した普遍的な特微が獲得のある一時期に優先するとの議論かなされている.本稿は,4~6歳児を対象に,複合名詞の擬似語と,無意味新造語を用いた実験を行ない,アクセント規則形成過程において,幼児に優先的に選好されるアクセントパタンがあるか検討したものである.実験の結果,以下の点が明らかとなった.平板アクセントは,2+2モーラ複合名詞に限定的で,発達に伴い確立する.「アクセントを置くこと」については,複合名詞の語長に関わらず,後部要素のアクセント型に対応するという共通の原理が機能していた.平板アクセントは発音として単純で自然といわれている.しかし,言語学的に見て,アクセントは発話の必要な部分に音声的なプロミネンスを与えるという,言語コミュニケーション上の重要な役割を担っているので,上記結果が得られたものと考えられた.無意味新造語実験では,複合名詞実験の結果を支持する結果が得られた.