本発表では,タイ語・カンボジア語で,統語的あいまい文における境界をどのような韻律的特徴によって表示するかを比較対照した.
まずこの両言語で,文中に境界をもつかもたないかによって文意が異なってくる統語的あいまい文を作成し,母語話者にその録音を依頼した.さらにその録音を編集した編集音を作成,それによって母語話者に対する知覚実験をおこなった.
その結果,タイ語は音節延長という手段のみによって境界を表示することができるかカンボジア語はそれが不可能で,境界表示にはポーズ等他の要因の助けが必要であることがわかった.
さらにこうした境界表示方法の違いは,両言語において音節の可塑性が異なっていることと関連があることを指摘し,その可塑性の違いは両言語における重母音の出現比率と関係があるという仮説を提示した.