漢語アクセント規則の再検討
―2字・3字・4字漢語について―

胡 世光(東京大大学院)

「漢語」は現代日本語(共通語)の中で相当な比率を占める.その漢語のアクセント規則については既に多くの記述がある.本発表は,モーラ(拍)を基準とする従来のアクセント記述法ではなく,漢字の「字」の観点から,1アクセント単位をなす漢語のアクセント型の規則を再編成することをねらいとする.これにより,漢語アクセントの記述がより単純になる.

★発表者の考え:

複合語の構成要素について: 漢語複合語のアクセントを考える時,前部要素 (=X) と後部要素 (=Y) に分けることはやはり必要だが,「漢字1字」の Y をもつかそれ以外かだけを分ければ済む.

アクセント核の指定について: 漢語の場合,どの「字」に核がくるかだけを指定すれば良いと考える.なぜなら,その「字」の中でどこにアクセントの核が置けるかは,モーラの種類によって,ほとんど自動的に決まるからである.

★規則の再検討:

(1) 2要素から成り,「漢字1字」の後部要素 (=Y) をもつ漢語は全体の字数に応じて2つのパターンに分かれる: a. 3字・4字漢語では Y の種類によって「-2字型」(後ろから2番目の漢字に核がくる型)ないし無核となる.b. 2字漢語の場合は,無核の1種類となる.

(2) (1) 以外の漢語は次の規則に従う: a. 3字・4字漢語はほとんどが「-2字型」となる.b. 2字漢語の場合は,モーラ数及びモーラ音素の「位置」から無核か「-2字型」かを予測する.(2モーラ語:「-2字型」が多い.4モーラ語: 無核が多い.3モーラ語: モーラ音素が2モーラ目にあると「-2字型」(促音の場合は無核)になり,3モーラ目にあると,無核になる傾向が見られる.