しばしば指摘されているように日本語の「読点」にはその使用に関して決まった規則というものが確立されておらず,文章によってその使用に(少なくとも表面上)大きな差が存在する.単に使用頻度ということに限っても,いくつかの異なる文章の読点数を比較すると,多いものは少ないものに比べ3倍もの差が時に存在することが分かる.
そのような読点使用頻度の文章間差を,本研究では構造の視点をとりいれて検討した.検討の結果,一見規則性を欠くように見える文章間の読点数の差も構造的な視点を取り入れてみると,少ないものは階層的に上位の節点の箇所にのみ打たれ,読点が多いものは階層的に比較的下位の節点の箇所にも打たれていることが分かり,文章ごとにかなり一貫性があることが分かった.そしてまた,構造上どの階層にまで読点が打たれているかという違いが,文章間の読点数の差の大きな部分を占めているようであることも明らかになった.