アラビア語においては,語根は子音のみで形成され,母音は活用等を表す,別の独立した形態素と考えられる.語根子音は通常音韻交替を受けることなく表出するが,語根子音にわたり音 /w, y/ を含む場合,これらの音は母音への交替や消失等,様々な音韻変化をもたらし,活用諸形は複雑な分布を示す.
本発表は,この種の語根で構成される動詞(弱動詞)について,最適性理論を用いて考察した,特に,KaWaNtu → kuntu (=I was) の例で,母音の形態素 a よりも語根要素 W の忠実性がより強く働いているのが確認され,そのため従来の忠実性にかかわる制約を語根/接辞などによって区別し,MAX(IR-OR), MAX(IV-OV), MAX(IA-OA) (R=root, V=vowel, A=affmx) のような制約の必要性を提案した.