テレビインタビューにおける談話分析
―frame のシフトと会話者間の心理的距離について―
高木 佐知子(大阪大大学院)
会話における話者間の心理的な距離の研究に関して,敬語が体系化されていない英語では方法論は確立していない.本研究は,frame という概念を用いて,英語のテレビインタビューにおける話者間の心理的距離の変化を考察するのを目的としている.
Bateson, Goffman などにより考察されている frame という概念は,我々がある行為に対して行う枠づけのことである.コミュニケーション行為においては,「今何が起こっているのか」ということに関するメッセージを伝達し,理解することが,その行為にある解釈の frame を当てはめることになる.その解釈には,話者の意図や相手との関係なども含まれる.本研究では,frame シフトの分析にあたり,Goffman (1981) のいう,会話において話者がとる位置づけである footing の分析も行っている.それにより,frame を,より動的なものとして解釈することを試みている.
本研究では,CNN による "Larry King Live" という英語の対談番組を録画し文字化したものを分析した結果,interview frame 内部での frame シフト(frame 内シフト)および,別の frame へと移行する外部のシフト(frame 外シフト)が認められた.そして,それらのシフトに伴い心理的距離が変化している事実を捉えて,考察を行った.
本研究は,frame シフトの複雑さを明らかにすることにより,言語を中心とした現実の人間の関わりを把握する手がかりの1つを見い出そうとしている.