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日本語の「不定称代名詞」に関する一考察
―「どこ,どこか,どこでも,どこも」―

中村 美代子(慶應義塾大大学院)

「どこ,どれ,だれ,なに,いつ」といった疑問を表明する言葉は,「か,でも,も」などの助詞のついた場合,どのように意味が異なってくるのであろうか.これらの言葉は従来の国語学研究で「不定称」代名詞とされてきたが,何か「不定」であるかについて詳細かつ統合的に触れたものは少ない.本稿では例として,場所を示す「どこ」,及び助詞を伴った「どこか」,「どこでも」,「どこも」をとりあげて分析する.例文には 1) バス停はどこにありますか,2) バス停はどこかにあります,3) バス停はどこでもきれいです,4) バス停はどこもきれいです,の4文を挙げ,それらの文と話者の心的態度との関係を踏まえながら,語用論的分析を試みた.その結果,「不定称」の「不定たる所以」を構成する要因として,「特定のものを示さない」という「不特定性」,「その場で示すものを選択して一つに限定しない」という「非限定性」,「示したいものを認識していない(不明)」という「非認識性」,「不特定な指示対象に対して,特定を要求する」という「特定要求性」の4つが考えられた.又,不定称と不定称でない代名詞との違いはその「不特定性」にあり,不定称の不定たる所以には他の要因,すなわち「非限定性」,「非認識性」,「特定要求性」も助詞との関連の中で様々に関係してくること,一つの不定称代名詞は,助詞との関連の中で,これら要因の組合わせによるパターンによって統合的に意味が差異化されているということが判明した.更に,状況によっては認識主体という別の次元での要因が加わり,「不定性」はより多重な構造をとると考えられる.

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