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日本語日常談話における誉めとその返答に関する数量的研究

丸山 明代(広島大大学院)

本研究は日本人の日常会話における誉めことばとそれに対する返答とを分析することによって,日本人の誉めの会話の特質を明らかにすることを目的とする.

本研究は270人の大学生および大学院生によって書き取りにより収集された1019の誉めとそれに対する返答とを分析した.分析にあたってはログリニア法を用いて会話者の性別,社会的地位の差(学生による会話では,学年差を社会的地位の差とみなした),誉めの対象を独立要因として,誉めの返答の分布を分析した.その結果,各独立要因と返答の分布との関係において以下のような結果を得た.

会話者の性別の観点から返答(受け入れ/回避/否定)を分析した結果,受け入れによる返答は誉め手と誉めの受け手とが同性の場合によくみられ,否定による返答は誉め手と誉めの受け手とが異性の場合によくみられるという傾向が観察された.

会話者の社会的地位の差と返答の分布との分析の結果,地位の差は返答の分布に対してよりも誉めの発生に大きく影響することが分かった.誉めが最も頻繁に発生するのは誉め手の地位が誉めの受け手のそれと等しい場合であり,(p < .01),誉め手と誉めの受け手の地位が異なる場合は誉めは発生しない傾向にある.(p < .01). 誉めの対象(誉めの受け手の所持物,外見,技量,性格)と返答との分析の結果では,所持物,外見についての誉めは受け入れられやすいが,技量,性格についての誉めは受け入れられにくいという傾向が観察された (p < .05). 以上のように本研究は,各独立要因と返答の分布との関係においてみられる特徴を明らかにした.今後の課題は返答の分布に対する独立要因間の相互関係の調査である.

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