南不二男の文階層構造モデルでは,従属節内部における要素の包含可能性を手がかりにして,各従属節の所属する階層が分類されている.しかし従属節と主節がどのような相互関係で接続されているかという点については,捉えることができない.
本研究では,従属節と生節の相互関係に注目して複文の意味構造を分析する枠組み「従属節の機能レベル」を提出する.本研究での主張は,1) 機能レベルの違いによって,従属節は主節の異なるレベルと相互関係を結ぶ,2) 機能レベルの違いは,従属節内部の包含可能性や主節との関係的意味の違いに反映される,という二点である. 文脈によって従属節内部の包含可能性には異なりが生じることから,各従属節の所属は一つの階層に固定されるべきではないと考えられる.「従属節の機能レベル」の枠組みでは,従属節と外部との関係を重視することによって,従属節が所属する階層や,主節との相互関係の多様性を説明することができる.