空間用法からアスペクト用法への転化における視点対立 ―日本語・中国語・朝鮮語の対照を中心に―
白 海燕(神戸大大学院)
本発表では日・中・朝言語の空間用法からアスペクト用法への転化について空間認知的立場から考察を行ってみた.研究対象としては「内/外」,「上/下」関係表現と鏡像語を取上げた.その結果,まず,「内/外」,「上/下」関係の空間表現が,アスペクトヘの転化において,「開始・起動」を表したり,「終結・完了・完遂」を表したりするのは視点設定の違い(視点対立)から来るものであることが分かった.次に,「内/外関係」表現を除くと,「上/下関係」「鏡像語」においては厳密ではないが,「日本語」と「中国語・朝鮮語」の視点対立が見られる.これは,視点設定は決してランダムではないことを意味する.また,方向性の強い「鏡像語」現象は本稿でいう視点対立の現れでもあり,その視点対立の動機付けが同じであることを主張する.このように,視点の置き場の選択は空間認識や事象の認識に大いに影響を与えていて,場合によっては全く対立した見方をすることを改めて確認できた.