本研究では現代ウイグル語の指示詞に関して,以下のような体系を仮定する.
直示用法 (deictic) | 文脈照応用法 (non-deictic, anaphoric) | ||
非既知 (中立) | 近 | 遠 | u (変項解釈なし) šu (変項解釈あり) |
bu (mawu) | u (awu) | ||
既知 | šu | ||
(mušu) | (ašu) |
基本の指示詞 bu, šu, u は直示用法をもち,bu と u の違いは,話し手が対象物を話し手の領域にあるとみなすか,聞き手の領域にあるとみなすかの違いにあると考える.šu の用法は,話し手の既知知識を指示する用法であると考える.šu, u には,また文脈照応用法があり,u が変項解釈をもたないのに対し,šu は変項解釈をもつと考える.派生の指示詞 mawu, awu, mušu, ašu については,基本の指示詞 bu, šu, u の意味と,場所の副詞 mana, ana の意味との組み合わせから説明できると考える.