朝鮮語ソウル方言において,音節構造の違いにより強く聞こえる音節の位置が異なるという現象が報告されてきたが,これについて,単に聞こえ方に間する現象であるのみならず,音産出のレベルでも何らかの積極的な作用が起きているという説がこれまでにいくつか提案されてきた.本発表は,音響実験によりそれらの諸説を検証するものである.
実験は,第1音節ないし第2音節の音節構造が異なる2音節語のミニマルペアを分析資料として用い,音響解析によりミニマルペア間の持続時間,F0, intensity を比較した.
実験の結果,先行研究の諸説が成り立つならば観察されるべき現象が全く観察されなかった.したがって,先行研究の諸説はどれも否定される.従来言われてきた聞こえ方の違いの現象を説明するため,この現象は重音節と軽音節の持続時間の違いに起因する純粋に心理的な現象であるという仮説を発表者は新たに提案する.