本発表では音韻論的な観点から東京方言における母音無声化のあらゆる生起位置を (1) 母音の開口度,(2) 前後子音,(3) 無声化生起率と他の記述,の3部分に分け,無声化規則表の製作を試みた.音韻記号で記述できない規則は該当の位置に文字で記述した.さらに,分かりやすくするためにその規則に関する無声化の具体例を挙げている.
また,無声母音の前後子音の調音様式によって変動する生起率をめぐる問題点を解決するために,NHK 発音アクセント辞典を規範として作られた河井 (1995) の無声化表と対照し,その矛盾が生じた理由を考察した.この考察から,発音辞典で示された無声化規則は必ずしも音声を使って分析する無声化現象と合致するわけではない,すなわち,発音辞典と実際の発音における無声化の様態には多少のずれがあることが分かった.