中国語複合動詞「改V」の形成と意味
―日本語の「V+かえる」「V+直す」との比較を参考に―
王蓓淳
由本陽子
由本陽子
本発表では、まず語彙的緊密性の違いや動詞重複の有無を根拠とし、中国語複合動詞「改V」には語彙部門と統語部門で結合する二種類があると主張する。また、両者の意味の違いは、形成部門によって、二つの動詞の意味の合成の仕方が異なることにより説明する。概念構造(LCS)を用いて分析すれば、統語的「改V1」では「改」のLCS内にV1のLCSが埋め込まれる。一方、語彙的「改V2」では「改」とV2のLCSは手段関係で結合する。語彙的「改V2」のLCSは「V+かえる」とほぼ同じだが(cf. 由本2005)、項の随意性の点で異なり、そのために生じる差異がある。統語的「改V1」は一部「V+直す」と重なるが、基本的に日本語複合動詞にはない意味をもつ。これは、いわゆる補文構造ではない形の「改」のLCSにV1のLCSが埋め込まれるからであるが、本発表では、この合成パターンが複雑述語形成に普遍的に認められることを示す。