数量詞の解釈とリニアオーダー
~参照点構造の観点から~

尾谷 昌則(京都大研修員)

本発表では数量詞文の解釈の違いを扱った.例文 (1) の場合には合格者が全員で3人しかいないという解釈(全体読み)が強いが,例文 (2) では合格者が3人以上いるうち,3人だけが部屋に入ってきたという解釈(部分読み)が優勢である.

(1) 3人の合格者が部屋に入ってきた.(連体数量詞)
(2) 合格者が3人部屋に入ってきた.(遊離数量詞)

これは,連体数量詞と遊離数量詞がそれぞれに異なる認知を反映した結果である.日本語は数量詞文に眼らず,発話者の〈認知の流れ〉と〈語順〉に iconicity が見られることが多い.本発表では,Langacker (1991,1993) が提唱している参照点構造の概念を援用して,この両方の数量詞文には参照点構造に基づく〈認知の流れ〉の違いが反映されており,その流れが〈語順〉とある程度の iconicity を有しているのだということを主張した.