多義語の意味に関わる二つのネットワーク構造
―“心理的プロトタイプ”度の高さを位置付ける―

鈴木 智美(東京外国語大)

多義語の異なる複数の意味における心理的プロトタイプ度の高さを,多義語「ツク」(付・着・就・即・憑・点)及び「ツク」(突・衝・撞・搗・吐)を例に,多義語の意味に関わる二つのネットワーク構造において位置付けることを試みた.

心理的プロトタイプ度の高さは,多義語の意味のネットワーク構造においては関係付けの網の集中度として表される.ネットワーク上において他の意味との結び付きを密に持つ意味は心理的な活性化の度合いが高く,その定着度も認知的な顕著さも高い.従って心理的プロトタイプ度も高くなっていると考えられる.

また心理的プロトタイプ度の高さは,百科事典的な知識のネットワーク構造においては意味規定の豊かさまたは定着度の高さとして表される.知識のネットワークが密か,または定着度の高い知識を支えとする意味は心理的な活性化の度合いが高く,定着度も認知的な顕著さも高い.心理的プロトタイプ度も高いと考えられる.