「*太郎ばかりが若い」という文は通常容認されないが,次のように命題否定表現が後続すると容認可能となる:「太郎ばかりが若いのではない」.このことを統語論的方法で説明できない.というのも,否定される命題はあくまでも容認不可の文だからである: [[*太郎ばかりが若い] のではない].本発表では,「ばかり」は,【MDm={A, ¬A (A以外の要素)}】 (MDm=任意の事柄 [matter] に関わる Mental Domain) の基本的認知構造を有し,その構造における認知スコープ(網かけ)と特定化の場所(影付文字)の違いにより,複数の用法を具現化することを提案し,上記の問題の解決を試みた.「太郎ばかりが若いのではない」=【MDm={A, ¬A}】(m=若い人物,A=太郎)「30分ばかり待った」:【MDm={A, ¬A}】(m=待ち時間,A=30分,¬A={29分,31分,,})「このさいころ1の目ばかり出る」:【MDm={A, ¬A}】(m=目の出方,A=1,¬A={2,3,4,5,6})