非能格自動詞の使役化と非対格自動詞の使役化
高井岩生
本発表では、使役化を起こすサセには、(i)非能格自動詞語幹に付加し、その動作主項の格標識をヲに変更し、ニ格のCauseeとガ格のCauserを加えるサセ(3項サセ)と(ii)非対格自動詞語幹に付加し、その非動作主項の格標識をヲに変更し、ガ格の動作主項を加えるサセ(2項サセ)があるということを主張した。このように仮定することで、非対格自動詞からはニ格名詞とヲ格名詞が共起する使役文が不可能である(?*「校長先生が担任の先生に生徒達を混乱させた」)という事実を説明できる(もちろん、非能格自動詞語幹の「校長先生が担任の先生に生徒達を帰らせた」は可能である)。「?*ジョンがリンゴに腐らせる」という事実も「腐る」が非対格自動詞であり、2項サセしか付加しないからであると説明できる。発表では、更に、(i)の分析が他動詞の使役化にまで拡張できる可能性があることを示した。