句を包摂する複合語の研究
―日中英の事例に基づいて―
小松 千明(お茶の水女子大)
句を包摂する複合語 (Phrasal Compound: PC) に関して,Komatsu (2000) では,英語と日本語の PC を考察し,PC は,(i) 語のみから或る普通の複合語 (Ordinary Compound: OC) と共通の特徴を示す,(ii) 可能な内部構造が制限されている,(iii) OC よりも有標的である,のような特徴をもつことを指摘した.本研究では,中国語についても考察を行い,(iv) 上記 (i)-(iii) の特徴が中国語の PC にも観察されること,(v) 中国語には,動作主を表わす表現として,英語や日本語では許されない「動詞+目的語+名詞」型の複合語(e.g 伐木人)が観察されることを指摘する.上記 (i)-(v) は,「P Cは,意味的には句で表現される内容を形式的には X0 という一つの単語で表わさなければならないという状況が生じた場合に,これらの意味的要請と形態的要請の間の衝突を回避する方略の具現として,0C の非主要部が XP にまで拡張され,PC が可能になる」とする Komatsu (2000) で提示した分析の帰結として得られることを主張する.