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ドイツ語の話題化構文における能格的振る舞いの意味

今西一太

ドイツ語の以下のような話題化構文では、名詞と動詞(過去分詞)が助動詞の前にあり、(助)動詞が文の第二要素になるというドイツ語の統語規則に違反している。

Einen Autounfall gebaut hat er noch nie. “He has never caused a car accident.”

これは、名詞+過去分詞が疑似抱合という一種の複合語形成で一つの語になっているためである。疑似抱合では動作主的語句(AやSa)よりもそれ以外の語句(Sp、P、場所、道具、様態副詞など)が動詞と組み合わせやすい。これは、A、Saはreferentialな場合が多く、疑似抱合などの複合語形成では、各要素が普通non-referentialであるためである。A、SaとP、Spの対立という点でこの現象は一見分裂能格性を示しているが、実はreferentialityを基準とするA・Saとその他(場所や副詞も含む)の対立である。このような例を類型論で言う「能格性」と同一視してよいかどうかは議論の余地がある。

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