-しかは否定極性項目ではない

片岡 喜代子(日本大非常勤)

日本語の-しか句は,否定要素と必ず共起するため,一般に否定極性項目 (NPI) と仮定されることが多く,構造的には否定要素による構成素統御が必要条件とされる (Kato 1994, Aoyagi & Ishii 1994, Kuno 1995 等).

本発表では,-しか-ない構文に他の量化表現が共起した場合の,「-しか-ない」と「-ない」,そしてその量化表現による作用域相互作用についての議論に基づき,-しか句は,逆に,それ自身の構成素統御領域に否定が存在しなければならない要素であることを示した.それを根拠として,「否定による構成素統御」という NPI の構造上の必要条件 (Kato 1994) の観点から捉えると,-しか句は NPI ではないことを主張したことになる.