中世口語における「ホドニ」から「ニヨッテ」への勢力交替現象は,小林 (1973) 以来明らかになっているが,中世の口語資料と言える『捷解新語』においても「ホドニ」の用例数は原刊本 (1676) で259例,改修本 (1748) で143例,重刊本 (1781) で88例と減少しているものの,逆に考えれば,改修本や重刊本に,まだ「ホドニ」が残っていることになる.本発表では,その残っている,つまり,改修されなかった「ホドニ」に着目し,Si<[(p~A)p~B]~E> 又は Sii<{[(p~A)p~B]p~C}~E> という構成をもつ文において,改修本・重刊本の Si ではBに,Sii ではCの位置に「ホドニ」が多く見えること,他の接続助詞との包含関係も関わっていることから,改修要因として「階層的包含関係」が反映するものと考え,「ホドニ」の通時的変化に伴って現れる「階層的包含関係」の文例を原刊本と改修本・重刊本から示した.
(S<>:文,p: 句または節,ABC: 接続助詞,E: 命令・依頼及び陳述等の後件)