オリヤ語には,動作の再帰性を表すことができる動詞形が3つある.(1)“動詞の重複形+ he-「なる」”,(2)“動詞の接続形+ he-「なる」”,(3)“動詞の接続形+ ne-「取る」”,である.3者はともに,「子供は自分の体を掃った」という出来事のように,動作が主語によって引き起こされて,動作の働きかけが主語の身体へ及ぶことを表すことができる.
3動詞形は,再帰性を表しうる点では一致する一方,再帰性を表しうる主動詞の種類にかんして相違し,また,再帰性以外の可能な用法の種類にかんして相違する.3者のこのような分布上の相違は,これらの基本的意味での相違の反映である,と論じた.3者が再帰性を表しうるのは,互いに(似ているが)異なった根拠付けによる.また,3動詞形の意味的特徴は,各形式を構成する形態素である he-「なる」,ne-「取る」の本動詞としての用法の意味的特徴によって,限られた程度ではあるが,動機付けられていることを指摘した.