本発表では,韓国語と日本語の指示詞 ku 系とソ系の現場指示用法の中で,従来の研究で議論の多かった中距離指示用法について,その存在の有無と出現条件について考察した.
まず,日本語のソ系指示詞の中距離指示用法は場所を指し示す用法に限るという従来の主張に対し,その他の指示対象を指し示す時にも距離的観点が考慮されることを示した.次に,従来の研究では否定されてきた韓国語の ku 系の中距離指示用法について,自然な発話の観察から存在することを示した.最後に,中距離指示用法の出現条件として,指示対象を指し示す際には,指示対象を見つめるか,指か顎で指すなどの指差し行為を伴うべきであるということと,指示対象は話し手と聞き手から等距離に位置し,かつ両者から非近で非遠の場所に存在すべきだということを確認した.