本発表では,済州島方言における /esi/ というアスペクト形式を中心に,形容詞述語文におけるアスペクト現象について考察を行った.
動詞文における /esi/ は,「+完了性」「+結果性」というアスペクト的意味・用法を持つが,形容詞述語文でも /esi/ の接続が観察されることを報告し,無標形との意味的な対立について考察した.その結果として,1) /esi/ は,「状態変化後の状態の維持」というアスペクト的な意味を持ち,人やものの一時的な状態(属性)を表すような文に現れるのに対し,2) 無標形は,話者がある出来事に接し感じたことをそのまま発する感覚・感情形容詞文のようなタイプの文に現れ,動詞と同様のアスペクト対立が形容詞述語文においても見られるということが明らかになった.