Deriving Reciprocity from the Symmetric Predicate -Aw

小町 将之(慶應義塾大大学院)
鈴木 猛(東京学芸大)

日本語の「あう」文が担う相互性は本動詞「あう」の対称性から導出できることを示した.対称動詞の意味は複合的であり,参与者間に成り立つ関係が複数であること,関係が結ぶ2つの項が同一でないこと,参与者間に成り立つ関係が対称的であること,という3つの条件に分解できる.これらの条件がすべて満たされるときに相互解釈が得られ,それ以外のときに非相互解釈が得られる.Hoshi (1994) の受身文の分析にならった統語分析を適用し,これらの意味的制約が統語構造に対応していることを示した.

我々の分析では,「あう」文の局所性,非相互性解釈の存在,「V+あう」が統語的複合語の諸特徴を示すことを説明できる.この分析によれば,先行研究に見られるような空演算子を,相互文に想定する必要はなくなる.また「られ+あう」文に対する考察を行い,「あう」が態を担う要素として独自の投射をもつという可能性も示唆した.