栃木県内の言語使用の境界線は足利市周辺地域と,宇都宮市周辺地域との間にみられることが明らかとなっているが,本研究では,現在の栃木県の言語境界線の変容類型,また栃木方言についての言語意識の境界線,交通・伝達手段の年表作成による,言語使用と言語意識の変容との関わりについて明らかにすることにある.言語境界線の変容類型は,大きく7つにわけられる(宇都宮から足利への推移型・足利から宇都宮への推移型・両地域からの推移により新たな併用領域が形成された型・南関東と北関東の間にあった境界線が北へ推移してきた型・言語境界線維持型・言語境界線消滅型・新方言境界線発生型).言語使用意識については共通語は女性に受容されやすいこと,藩政時代とそれ以降の行政区画の変容も言語境界線の推移の要因として考えられることがわかった.