本発表では,島原方言の複合名詞音調について,3モーラ以上ならば構成要素の語声調に拘らずすべて無標な語声調になることを主張した.Hayata (1976) や早田 (1977) などによると,音調のうち「有無や位置」が問題になるものをアクセント,「型」が問題になるものを声調,単語単位にかかる声調のことを語声調であると定義し,また複合名詞X+Yの音調はXの声調が複合語全体の声調になり,Yのアクセントが複合語全体のアクセントになると主張した.しかし,島原方言の名詞はA型(第1音節のみ高い)とB型(最終音節のみ高い)という2つの型を持つ語声調方言であると分析されるにも拘らず,複合名詞の音調は前部要素が3モーラ以上になると全てB型になるということが観察された.この事実に対して本発表では無意味語が原則としてB型になるという事実からB型が無標な語声調であり,前部要素が3モーラ以上の複合名詞ではそれが表れたのだと主張した.