本発表では,英語と日本語において運動様態動詞が path 句と共起する際に生じる通言語的な差異を解明する為に GO 関数融合型言語と見なされる英語と,GO 関数非融合型言語と見なされる日本語の比較検証を行った. 運動様態動詞における通言語的な差異は,語彙概念構造の操作から説明しようとした Jackendoff (1990) やTenny (1994) では解明不可能であったが,本論のダイナミズムに基づく分析では説明可能である.
生後さらされる言語データが日本語か英語かによって,両言語の有する文法体系が異なり,前者においては「へ/に」句が方向を含意しないため GO 関数の具現化が必須となり,後者においては前置詞句が方向を含意するため GO 関数の融合が誘発される.本理論の論証として,運動様態動詞の下位分類,to/intoと「へ/に」の比較,Slobin (1996) の修辞上の制約についての説明をした.