「小膝をたたく」「小首をかしげる」といった慣用表現は,接辞「小」が動詞句全体を修飾する点が特異的である.本発表ではこの様な表現のアスペクトについて考察し,その結果,スル形では必ず限界動詞句となり,テイル形では動作パーフェクト又は結果継続となって動作継続の解釈が不可能になる事から,「小」は完了したイベントに対しこれを「小さい」と認定する機能を持ち,接辞でありながらアスペクト限定の機能を持っているという事を主張した.
更にこのアスペクト限定機能は「小」に「3枚の皿を割った」の「3枚」の様な達成量数量詞的性質がある事,及び「小」が付加される身体名詞は定名詞句であるという事によって複合的に達成されると提案した.又「ひと花咲かせる」といった表現中の接辞「ひと」も分析し,同様のアスペクト限定機能を確認した.よって日本語では接辞が述部全体のアスペクト決定に寄与する場合があるということを示した.