本発表では,現代口語チベット語ラサ方言の動詞述語の一つである「Vpf-pa ^ree」(Vpf は動詞の完了語幹,-pa は名詞化接辞,^ree 述語動詞)を扱う.この「Vpf-pa ^ree」には,より名詞述語的なもの(動詞述語A)とより動詞述語的なもの(動詞述語B)の2種類がある.本発表では,その二つの違いを明らかにし,今まで詳しく述べられてこなかった動詞述語Aの機能分析を行う.
まず,動詞述語A,Bについて,先行研究で述べられている否定形の違い,焦点明示機能の違いをふまえた上で,「焦点の Vpf-pa ^ree」の機能を分析した.次に,「焦点の Vpf-pa ^ree」と名詞述語を比較することで,「焦点の Vpf-pa ^ree」の焦点明示機能は,この動詞述語が名詞述語に近い構造をとることから出てくることを述べた.更に,動詞述語「Vpf-pa ^ree」の否定形の整理を行い,その統語構造の違いを明らかにした.