3項・2項交替動詞の統語構造と語形成

外崎 淑子(東海大学)

形態的に対応する「3項・2項」交替動詞には,(a)「太郎が花子に本を預る」(b)「花子が本を預る」のような対応をするグループがある.本稿では Matuoka (1999) の分析を元にこれらの動詞対の性質をまとめ((i) (a) の「に」は構造格である,(ii) (a) の「~に」は「~を」よりも構造上,非対称的に高い位置にある,(iii)「<与え手>ガ~を預ける」は「<与え手>カラ~を預かる」のように表しうる,(iv) 3項動詞と2項動詞は両者同じ事象を視点を変えて表した表現である),その統語構造を提案した.これらは単独述語であっても複雑な構造をしており(cf. Hale and Keyser 1993),3項動詞構造と2項動詞構造は平行的で,ただ v の外項素性と追加項を導入するApplicative head の与格素性のみが異なると論じた.