漢字を構成する共通の要素である部首は,現代日本人の漢字の意味判断にどのように影響しているのであろうか.本研究では,サンズイとイトヘンの2種類の部首を選び,コンピュータのスクリーンの2次元空間に,同じ部首を含む漢字および異なる構成要素からなる漢字を意味的に配置する課題を日本語母語話者に課した.多次元尺度法によって,部首を基にした「漢字の意味空間」を描き,漢字の「認知的意味」と「字源的意味」を比較した.さらにクラスター分析で,漢字の認知的意味の類似性を検討した.その結果,サンズイもイトヘンも,部首の意味が直接イメージできる漢字群,ある程度抽象化された漢字群,部首からはイメージが得られない漢字群の3つに分類できた.本研究では,これら3つの分類を2次元の意味空間に描き,部首からのイメージ度の違いが現代日本人の漢字の意味理解に影響していることを示した.