日常言語における価値的否定性と対象依存的否定性

有光 奈美 (獨協大学非常勤講師)

価値的否定性と対象依存的否定性という分類で、対義語や対比現象に関する否定性のメカニズムを解明する。価値的意味(鍋島2003)、(Leech 1974) 、(國廣1982)等の先行研究から、価値的否定性とは、健康・病、勝ち・負け、良い・悪い、の後者のように語自体が否定的意味を持つものと定める。一方、対象依存的否定性は、対象で否定性の有無が決まる。背の高い人の足は大きい・赤ちゃんの靴は小さい、荒川は深い・このスープ皿は浅い、は性質描写だが、若者の夢は大きい・あの男は肝っ玉が小さい、読みが深い・考えが浅い、は語自体に否定性はなく、肝っ玉等の対象との結びつきで否定性を持つ。長い・長たらしい・長すぎる、等の接尾語的構成、太っている・ふくよか・デブ、等の積極的・蔑称的評価でも否定性の有無は決まる。