本発表では、「尺度上の隔たり」を表す日英語の構文の多機能性を意味地図(semantic map)に基づいて説明した。尺度隔たり構文の多機能性は以下の3つの普遍的機能から成り立っていると考えられる。(A)肯定的格上げ:話し手は既知情報的要素よりさらに高いレベルの要素さえも成り立つことを主張する(土佐どころか、日本に名をのこす者になるかもしれませぬ)。(B)否定的格下げ:話し手は既知情報的要素よりさらに低いレベルの要素さえも成り立たないことを主張する(最近の学生の中には英語はおろか日本語の文章さえもうまく書けない者がいる)。(C)対立:話し手は既知情報的要素と正反対の要素を主張する(Far from helping the situation, you’ve just made it worse.)本発表では、(ⅰ)各構文の多機能性はこれら3つの機能からの選択の仕方によって決定されて、(ⅱ)意味地図上の各機能の配列は普遍的な配列である、ということを通言語的、通構文的比較をもとに論証した。