本発表は、「焼きたてのパン」のような動詞に接続し、修飾要素を形成する形態素「たて」について記述的一般化を試み、「たて」構文の生成メカニズムをPustejovsky 1991 の提案するevent 構造の観点から理論的検証を行った。「たて」構文が可能な述語は、有界/非有界のどちらの解釈も可能なアスペクト特性が語彙的に未指定であるアスペクト中立述語であることを観察し、「たて」構文は、形態素「たて」の複合によって、もともと中立的であった述語から有界的な性質を取りたてることで生じる構文であることを明らかにした。
本発表では、event 構造におけるsubevent の顕在化のメカニズムを提案し、アスペクト的に中立である述語は、<act>、<state>の顕在化未指定の2 つのsubevent を持つと仮定し、「たて」が、<state>のsubevent を顕在化することで、「たて」構文が成立すると主張した。