Bošković and Gajewski(To appear)では、「冠詞を持たない言語(例:日本語・中国語)は否定辞繰り上げ(主節否定による従属節強NPIの認可)を許さないのに対して、冠詞を持つ言語(例:英語・スペイン語)は否定辞繰り上げを許す。但し、主節の否定辞による従属節内容の否定(の解釈)[いわゆるLower Clause Negation Interpretation (LCNI)]は、冠詞を持たない言語にも適用可能である」と述べられている。本発表では、中村(2006)における「Dモード(外置の認知モード)寄りの言語は冠詞を持ち、Iモード(認知のインタラクションモード)寄りの言語は冠詞を持たない」という主張を出発点として、『Dモード寄りの言語は否定辞繰り上げを許し、Iモード寄りの言語は否定辞繰り上げを許さない。但し、IモードからDモードへのモード転換が生じ、Dモードでの捉え直しが生じると、LCNIが活性化する』と論じる。