これまでのモンゴル語およびモンゴル諸語にかんする先行記述では,非自立的な形式はparticle に分類されている.しかし,particle に対する明確な定義がなく,同じく非自立的な形式suffix との区別があいまいになっている.本発表ではシネヘン・ブリヤート語を対象に,particle,suffix とされる形式が,文法・音韻面でどのような特徴を有するのか分析し,自立語,enclitic,suffix にはそれぞれ,プロトタイプ的なものから周辺的なものまで程度には差異があるが,高さアクセントへの関与という基準から,3者は明確に区別できると結論づけた.従来particle とされてきた形式のうち,独自のアクセントを有するものは自立語,直前の語のアクセントを移動させるものはsuffix として分類するのが妥当であり,またsuffix とされている形式の中にも,実際にはclitic と判断されるべき形式があることを付け加えた.