本発表では、「完了のアスペクト」の意味を表す「~あげる」と“up”に焦点を当て、意味の上では両者が「完了のアスペクト」として理解されるものであっても、「対象と対象がゴールに至るプロセスとの関係」という観点から比較することによって、「~あげる」と“up”には共通性と差異が存在することを考察した。「~あげる」については、「完了のアスペクト」を表すものを『逆引き広辞苑』より「~あげる」を含む複合語(93 語)の中から、「V1してV2 する」といえないものを先ず選び、(A) 作業終了に伴い「完成品」が予想されるか、(B) 動作の完了そのものに重点が置かれるかという観点から、(A)「作りあげる」、(B)「勤めあげる」などの24 語を選び出し、Lindner(1981)における「完了のアスペクト」を表す“up”と比較した。そして、「対象の部分への働きかけによって対象全体が基準形へと変化していくプロセス」の場合にのみ、「完了のアスペクト」を表す「~あげる」と“up”には共通性が存在することを示した。