機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、「かき混ぜ」が文理解の過程において大脳皮質の活動にどのような影響を与えるかを調べる研究を、日本語の与格目的語をとる他動詞文を対象として行った。
その結果、まず、基本語順文の読解時とかき混ぜ文の読解時の大脳皮質の賦活領域が類似しており、特に言語野と考えられているブローカ野およびウェルニッケ野に共通して活動が見られた。これは基本語順文とかき混ぜ文の理解に必要な脳内認知処理がかなりの程度共通していることを示唆している。次に、かき混ぜ文の脳活動と基本語順文の脳活動との直接比較を行ったところ、かき混ぜ文の理解過程において、統語解析に選択的に関与すると指摘されている下前頭回下部に活動が見られた。この結果は、かき混ぜ文は移動を含むという点で基本語順文よりも統語構造が複雑であるとする理論言語学の仮説を、脳機能イメージングの観点からも支持するものである。