パラオ語の動詞接辞meN-の機能

下地 理則(東京外国語大学大学院)

本発表では、パラオ語の動詞接辞meN-の機能について論じる。本発表では以下の構造の文を扱う:

【meN 動詞文】  構造:  [meN-Stem]  er  NP(特定的)
                Ak=meng-uiu er a hong.
                1sg.=meN-read er book.
               「私はその本を読んでいる。

meN 動詞は多くの場合、意味上の目的語名詞句(er NP)を伴う。このことからJosephs (1975)はこれを他動詞と分析している。

本発表は、er NP が統語的にみて目的語であるのか否かを中心に分析する。その際、Josephs (1975)がもう一方の他動詞として記述し、主要な先行研究も他動詞と認める完了動詞との対比を行う。その結果、er NP が統語的には目的語と言えず、任意項であることを示す。さらにmeN 動詞の一部にはer NPを全くとらないものもあることを示す。以上よりmeN-は、統語論レベルにおいて自動詞形成の接辞であると結論する。