文解析実験による陳述・時・様態・結果の副詞の基本語順の判定

小泉政利(東北大学) 玉岡賀津雄(広島大学)

 日本語の4種類の副詞(陳述、時、様態、結果の副詞)に関して、それぞれ文中のどの位置が基本の生起位置であるのかを、人間によるオンラインの文解析の観点から検討した。4種類の副詞を、各副詞について主語の前(ASOV)、主語と目的語の間(SAOV)および目的語と動詞の間(SOAV)に配置した文をつくり、3種類の文の正誤判断時間と誤答率を比較した。先行研究(Tamaoka et al., 2003)により、基本語順文のほうが対応するかき混ぜ文よりも正誤判断課題における反応時間が短いことが知られているので、この実験で副詞を含む文の基本語順が分かるはずである。実験の結果、陳述の副詞は主語の前(ASOV 語順のMP 副詞)が、時の副詞は主語の前と主語と目的語の間(ASOV またはSAOV 語順のIP 副詞)が、様態の副詞と結果の副詞は目的語の前後(SAOV またはSOAV 語順のVP副詞)が文解析の際の基本の生起位置であることが判明した。これは、文法の記述的・理論的研究の予測(Koizumi, 1993)と一致するものであり、述語と項だけでなく、付加詞(副詞類)についても、基本語順が存在することが分かった。