疑似部分構造における量化と修飾

朝賀 俊彦(福島大学)

 Det N1 of N2という語連鎖からなる疑似部分構造(pseudo-partitive construction)は、従来、主に量化表現との関連で論じられており、N1を数量詞(の一部)に対応する統語構成素とみなす分析が提案されている。その一方で、この構造の意味的な特徴として、有界性(boundedness)の変更を指摘する分析(Jackendoff(1991))や、修飾機能に言及する分析(Lehrer(1986))がある。

 本発表では、疑似部分構造の意味特性は、有界性(boundedness)の変更と、特性の帰属(ascription)に関わる同定(identification)の二つであることを示し、Jackendoff (1997, 2002)において提唱されている並列モデル(parallel architecture)に基づく分析を提案した。具体的には、疑似部分構造のN1の位置に生起する要素が、概念構造において、N2の有界性を変更する関数と、N2に対する同定の基準(reference object)という二つの意味要素として機能すると分析される。

 並列モデルに基づくこの説明によって、当該の構造に統語的な数量詞を想定する場合の問題が解決されることを示し、形式と意味との関係を、派生関係ではなく、対応関係としてとらえる分析の妥当性を主張した。