一般に受動文は外項を持たないとされ、また、Burzioの一般化は外項を持たない動詞には対格付与能力がないとしている。韓国語の所有者受動文において対格が現われる現象は、どちらかの一般化の修正が必要なことを示している。
本発表では、否定構文に随意的に現われる主格に対する制限が外項の有無に依存するという先行研究を所有者受動文に適用し、所有者受動文が他動詞、非能格動詞と同様に振舞う、即ち、主語が外項であることを示した。これにより修正すべきは、Burzioの一般化ではなく、受動文は外項を持たないとする一般化の方であることを主張した。
また、所有者受動文には被所有名詞句が主格で標示される変種では、主語は内項として実現するため、動詞には対格の付与能力はなく、デフォルトで主格が与えられるとする分析を行い、この分析が、上記のテストによっても支持されることを示した。