本発表では、節に「だけ」という接辞的要素が後続する形で数量・程度を表す構文(以下、ダケ節と呼ぶ)について、2 つの構造があることを示す。
(1) a. 花子は[太郎が ec 食べる]だけケーキを焼いた
b. [Opi [節 ti ]]だけ
(2) a. (文脈:酒屋さんに空き瓶を10 本持っていくと、ジュースを1 本もらえる)
花子は[酒屋さんに空き瓶を10 本持っていった]だけ、ジュースをもらった
b. [NP [N' [主部内在関係節 ][N φ]]]だけ (φが主部内在関係節をθ統率)
移動のあるダケ節(1)は遊離数量詞位置の空所が義務的であり、島の制約に従う非有界的な移動の特徴を見せることから遊離数量詞位置からの空演算子移動が関与していることを示す。移動のないダケ節(2)は島の制約に関して主部内在関係節と同様の特徴を示す。しかし主部内在関係節と異なりθ’位置にも生起できること、(2a)に示すように比例関係を表す文脈を伴うことから、関係名詞「分」と同様の性質を持ち義務的に内項をとる関係名詞「φ」を持つ構造(2b)を仮定できることを示す。