コリマ・ユカギール語の名詞句外所有構文について
長崎郁
本発表では、コリマ・ユカギール語の名詞句外所有構文を、A)所有者が目的語となり、被所有者が場所的意味を表す格形式をとるもの、B)所有者と被所有者が共に目的語となるもの、C)所有者と被所有者が共に与格あるいは位格をとるもの、D)所有者がトピック、被所有者が主語となるものの4つに分類した上で次の点を指摘する。
- 1)所有者名詞句と被所有者名詞句は、いずれのタイプでも一つの統語的単位としてふるまう。
- 2)Aタイプは「打撃・接触」を表す動詞を、Dタイプは「身体的状況」を表す動詞を述部とする場合にのみ可能である。
- 3)A・Dタイプは、所有者と被所有者が典型的な譲渡不可能所有の関係にある場合にのみ可能である。
- 4)B・Cタイプの構文も、譲渡不可能所有であることが成立要件となっていると考えられるが、所有者が無生物の例も見られるなど、A・Dタイプにおける所有者・被所有者の関係とは多少異なる。